東京の私立中高一貫生 学生生活編 ボリュームゾーンの中学受験終了

中学受験 偏差値50を半数の親子は超える事が出来ません。そんな世界の話を書いています

ボリュームゾーンの中学受験 ゴールデンウィークは最後の家族旅行

小学校6年生の生活が始まったばかりの4月の上旬ですが、中学受験生はゴールデンウィークをどう過ごすか真剣に悩む時期でもあります。

塾で特訓が行われる場合、上位クラスでは塾の提案通りに受講した方が良いと口をそろえて言われますが、ボリュームゾーン以下のクラスだと特訓に出るより自分の穴を潰した方がよいとの話もあり、ゴールデンウィークをどう過ごすかボリュームゾーンの中学受験家庭には試練の一つとになるのです。

ボリュームゾーンの中学受験 ゴールデンウィークは最後の家族旅行

「ゴールデンウィークは最後の家族旅行をしたいの。」6年生の模試スケジュールと小学校の行事予定を見比べていた私は眉間に力を入れて顔を上げた。妻は私の表情を確認して少しひるんだものの「まだ3年生の弟もいるのに夏休みは旅行できないでしょ?講習のないGWなら3日休んだってカリキュラムに遅れる訳じゃないし、GWが明けたら運動会の練習が始まるでしょ?運動会の練習が始まったら学校を3日休んで、旅行に行った3日分を埋めればいいと思うの。だからGWは最後の家族旅行に行こうよ。」妻のその口調は、反対したら反論する準備をしている時の口調のソレだったが、中学受験生の親としてやはりここは一度妻をたしなめよう、そう決意して妻に持っていたスケジュール表を見せてみた。

「7月に合不合テストがある、そのテストで偏差値55を取りたいんだ。今より6ポイントアップ。そのためには6月までに3ポイント上げたい、たった3ポイントだけれども多分大きい3ポイントだ。」なのでGWはしっかり苦手と向き合いたい、そう伝えたのだが「家族最後の家族旅行」そのフレーズは家族全員の気持ちを南の海に向かわせ私もそれ以上は抗えず、美ら海水族館近くのホテルに2泊3日の旅行が決まった。旅程としては1日は水族館に行くものの、他は弟はホテル近辺で遊べるようにして、姉は海を見ながら勉強が出来るような行程を組んだ。

羽田から那覇空港まで機内では計算や漢字に取り組んだ。機内は静かなので勉強には向いている。他にもコアプラスを持っている子や、低学年のデイリーサピックスを持っている子供を見かけて、どの家族も大変だなと親近感を持ちながら眺めていた。意外と機内での勉強がはかどり安心したのは束の間、空港から美ら海水族館までの道はGWという事もあり4時間もかかってしまい、狭いレンタカーの車内で暗記アプリを取り組んでいた娘も飽きてしまって半分は弟と一緒に昼寝をしていた。仕方がない、部屋に着いたら勉強すれば良いと思っていたけれど、到着した大きなホテルでは幼児が廊下で走り、窓を開けると外から楽しそうな声も響いてきた。とても勉強する雰囲気じゃないが、そうは言ってられない。息子を妻に託してプールに連れて行ってもらい、娘は勉強を開始した。昼間勉強出来なかったので焦っている娘の表情と対照的に算数のテキストには穏やかな顔をした牛がいた。

翌日は美ら海水族館で朝からたっぷり魚と人の群れを眺め、お昼を食べたら妻と娘は勉強をしに部屋に戻る事になっていた。幸い良い天気で、お昼を食べながら子供たちに太陽の位置を確認させ、南中高度の問題を出した。生きた勉強ができる。旅行の醍醐味だ。

その後は息子と私はイルカと触れ合う体験に出かけた。「お姉ちゃんと行きたかったな。」と少し寂しそうな息子。ホテルの部屋に戻っても騒ぐことも出来ず、彼も今夜は勉強をする予定。将来のためになると確信しているから可哀そうではない、と言いたいが、もう少し我が家に余裕があって小学校受験をしていれば、もっと違う小学生の過ごし方ができたのに、、と自分の不甲斐なさを子供が埋めている気もして全く可哀そうでないと言えばウソだった。同じイルカツアーに体験に来ていた10歳と8歳の兄弟と息子が仲良くなり、二人はインターに通っていて明日からは離島巡りに出かけると聞いて大きくなったモヤモヤはイルカを見ても癒されなかった。

部屋に戻ると妻はホテルでお土産を買うと1時間ほど前にでかけたらしく、娘は部屋で1人勉強をしていた。妻も平日働いている、受験に仕事に子育てに大変だ。気分転換が必要なのは子供より親なのかもしれない。子供は今の環境を受け入れているが、私達親が子供と思い出を作りたいし、癒されたいのだ。窓から見える海を眺めていると昼間のモヤモヤが薄れてきた。勉強の大切さと、本当にこの勉強に意味があるのかのモヤモヤがあるのは大人であって子供ではない。改めてそう感じた。

リゾートムード漂う中、我が家の夜は部屋で勉強会。子供はそれで納得している。私は責任を取って全力でサポートしよう。次は合格をしてこの海を見に来たい。そう思った。

最終日は渋滞回避のため早くホテルを出る事に。漢字と計算は機内でもできるので朝からつながれた牛の問題を解く。図形の勉強をするのは何度目だろうか。娘は図形の問題が苦手でパターンを暗記しているが、暗記に数字のあてはめ間違いをすることが多く、なかなか算数の成績が伸びなかった。結局図形の根本理解はできないまま那覇に向かうが飛行機に乗り遅れたくない人々で朝から渋滞しているし、レンタカー返却に時間がかかるしで行きよりも時間がかかり、さらに空港は多くの人でごった返しとても勉強がはかどるムードではなかった。こんな事ならレンタカー屋近くの飲食店で勉強していればと思い、時間があるのに勉強が出来ないというストレスが発生した。息子が何かを見ているので視線を追うと、あのイルカツアーで一緒だった兄弟とその家族がいた。インテリエリート系ではなさそうな父親とサングラスが良く似合う奥さん、きっと学歴カーストではない所でお金を得てそこにいるのだろうな、と勝手に想像した。兄弟は小学生なのに1個ずつサムソナイトのスーツケースを持って慣れた手つきでスーツケースにシールを貼っていた。あの道はあの道、我が家の道は我が家の道。

「帰ったら受験まで頑張ろう、今日は最後まで楽しもう。」今更、空港だけれども妻子にそう声をかけた。「6月までに偏差値を3上げて、それから7月の合不合までにさらに偏差値を3上げる。たったの3だ、上がらない訳がない。」夜の東京を見下ろしながら着陸前に娘と決意を確認した。

最後の家族旅行に来て良かったと思えた。

 

 

 

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